Project Bergson in Japan 2015-2017

ベルクソン『物質と記憶』の総合的研究

国際協働を型とする西洋哲学研究の確立

『物質と記憶 (Matière et mémoire)』(1896)は、フランスの哲学者アンリ・ベルクソン(Henri Bergson, 1859-1941)の第二主著の名である。同書は、心身問題・認識論・時間論を哲学問題系に、生物学・生理学・心理学・病理学・物理学といった多岐にわたる諸学問の文献を駆使し単身で取り組んだ、怪物的な書物である。問題自体の性質からして哲学史的にデカルト・カントとの対決は避けて通れない。さらに、知覚・身体・記憶・物質について、革新的な概念を打ち出したこの書物は、現代の分析哲学の道具立てを駆使して再検証されるべき多くの論点を含む。これに輪をかけて事情を複雑にするのが、援用される諸科学の膨大な知見だ。周知のように、20世紀の間に進んだ各分野の専門分岐のために、大規模な組織的協働なしにはその全面的再検討はなしえない。かつてない興隆を極めるこの「意識の科学」の時代に、ベルクソン『物質と記憶』という書物のもつ現代的な哲学・科学的意義を共有すること。今期の研究は、大規模な組織拡張を果たしてこれを目指す。

 

研究代表者 平井 靖史  (福岡大学 文学部 教授)